BEST of 試作品
先日、福祉まつりで展示のために、ダンボールの中にしまってあった過去の試作品を出してみました。懐かしいお宝からはここ数年の歴史が蘇りました。
何にでも失敗の歴史はつきものでしょうけれど、テコという太古からある単純な原理を使う「手であが~る」にも、試行錯誤がありました。気づくと販売する商品までには、さまざまなバージョンができてしまいました。テーブルの上に置かれたのもほんの一例です。
この頃の車輪にはすごい小さい径のベアリングを使ったものがあったんだなあ・・・高ナットをダブルで使ってたんだなあ・・・と、自分でもすでに忘れてしまっている事もあるのに驚いてしまいます。
でも、いろいろと作ったなかで、一番、印象に残っているのはどれですか?と聞かれたら、お騒がせ女優のように「別に~」と答える気はありません。
僕は迷わず下の”凶器”と呼ばれた2号機だと答えるでしょう。そんなこと誰からも問われたことはありませんけどね(笑)
しかし、これが記憶に残っているのは、初の成功作だったからではありません。実のところ、すべての思い違いが結集した大失敗作だったからです。
2号機は、こんな感じに・・・と、絵を描いて工場に溶接をお願いし、そのとおりに出来てきました。なのに自ら頼んでおきながらゴメンナサイという代物でした。
まず、重い!グラグラする!安定して持ち上がらない!低い車椅子を持ち上げたら大きく傾いてひっくりかえる!
そこに追い討ちをかけるように周囲からは「足の上に落としたら怪我する」、「これでアタマ殴られたら死ぬ」・・・散々な評価でした。
でもこれで後頭部を殴られるように、見落としていた多くのことに気づかせてくれたのも、この凶器と呼ばれた2号機だったのです。
・ジャッキは兵器にあらず。丈夫で壊れなければ良いというわけではない!
・一番、高い車椅子のパイプの高さに合わせるような安易な設計ではNO!
・支点と作用点の関係を考え、ジャッキアップ時の運動の軌跡を見直せ!
おそらく、この大失敗作の経験がなければ、我々は現在の実用機に至っていなかったでしょう。
「凶器の2号機」それ自体はけして使える代物ではありませんでしたが、偉大なご先祖様として、また初心忘れず、今後も発展を続けるため、技術遺産として保存しておこうと思っています。
関連資料 : 手であが~るの指針と開発秘話