未来を見据える帆船
石垣島に姿を現した3本マストの帆船”みらいへ”
帆船でセイルトレーニングなどのプログラムなどを通じて、未来を担う人材育成に取り組んでいるとのこと。
見かけは年代物に見えるけれど1992年に進水。2013年11月から帆船”みらいへ”として就航となっている。意外に新しい乗り物なのだ。
全長は52.16m、総トン数230トン、定員53名で堂々たるもの。ここまで大きい船体構造は木造ではなく見たところ鉄船のようだ。
マストの高さは30mで機関は4サイクルディーゼル320馬力×1。なので、風がなくても機走も可能だ。
セイリングは主にトレーニングと、現代の大型貨物船では感じられない自然の風を相手に大波を乗り越えた大航海時代の高揚感を今に蘇らせるためのものなのだろう。
帆船の魅力はなんと言っても、数多い帆に風をいっぱいにはらんだ優美な帆走姿だ。今回、残念ながら帆を揚げた姿を拝むことはできなかったが、掲げたポリシーからはかつて大海原相手に、帆に風を受け、星をたよりに船位を測り、夢とロマンを求めていた若き日の人類の心意気を未来へ繋ごうという意識が感じられる。
僕が子どもだったころ、未来のエネルギーといえば原子力だった。船舶の図鑑にも原子力船「むつ」が未来の船として毎回、紹介されていた時代だった。
カティサークのような帆船はウィスキーボトルにはなっても風まかせの帆船が再び交通手段として海を疾走することはないと考えていた。
本船の存在は時代は変り、再び人類は自然の風を味方につける微妙な舵取りが必要な時代に入ったということか。
帆船ではないが先日、世界一過酷な国際ヨットレースであるバンデグローブで日本の白石康次郎が完走を果たした。海に囲まれた日本にとって帆船もヨットも関わりの深いものである。
たった一人で風の力を使い地球を一周する。生身を使った夢と冒険に満ちた今となっては数少ないチャレンジの場なのだ。
いま再生可能エネルギーとして見直される風力は古くて新しいフロンティア、懐かしくて近未来的なテーマであることに改めて気づかされる。
将来を見るにはときに新しい力技に頼るばかりではなく、古きを訪ねなくては前に進めない。まさに温故知新の世界観だ。
その点では「手であが~る」も昔ながらの梃子(テコ)そのもの。電気も油圧も必要としない、人の力を拡大する昔ながらの人の知恵だ。ここはひとつ帆船と一緒に見直して未来の道具として利用いただけたら幸いに思います。